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認知行動療法 講義ノート(2)

講義2回目のノートです。

 

saitoulah.hatenablog.com

 

認知行動療法の多様性

 ・認知行動療法とは

 症状や問題行動を改善し、セルフケアを促進するために、非適応的な行動パターン、

 思考パターンを系統的に変容していく行動科学的治療法を認知行動療法という。

 →毎日の生活の中で習慣化しているパターンを変える。

 練習を繰り返していくことによって行動・思考パターン(癖)を変える。

 

 認知行動療法の中には、学習理論に基づく行動療法と、情報処理理論に基づく認知療

 法のそれぞれに由来する体系を含んでいる。

 学習理論:行動分析学など 動物実験から得られた知見を用いる

 情報処理理論:認知心理学のようなものを含むが、認知心理学に由来していない。

        臨床的な理論。常識的な臨床の知に近い。

 

認知行動療法の特徴

 人間の心の問題という複雑な現象を扱う際に、行動や認知という測定可能な変数に注

 目する。

 →心の理論:他人に私と違う心があって、その心を持っている、という認知ができる

       能力

       心の理論が身につくのは5歳くらいといわれている。3歳くらいだと、他

       人が自分と違う考えを持っていることを理解できない。

 

 心の測定は難しいので、主に行動を測定する。測定できる思考を認知ととらえる。

 行動パターン、思考パターンが続くにはそれなりの理由がある。その理由を持続要因

 と呼ぶ。

 本人と環境間の相互作用の中に見つけることができる。

 測定できるとクライエントや社会に対して説明することができる。

 

 ・行動・認知の持続要因を、環境要因も含めて客観的にアセスメントできる。

 ・その結果に基づき生活上の様々な問題の解決を図る。

 ・クライエントや社会へのアカウンタビリティ(説明可能性)が高い。

 

 介入効果も、行動や認知の変化から測定可能

 ・介入法自体を比較しながら、より効果的な方法に改良していくという道も開かれて

  いる。

  →結果を比較、検討し、客観的、定量的に評価できるようになってきている。

   マニュアル化できるようにしていく方向に目標になっている。

 

2つのABC分析

・行動療法のABC分析 (機能分析)

 Antecedent →Behavior  →Consequence

 CからBのフィードバックでBが起こる

 それが良いことだとBが強化される。悪いことだとBが減少していく。

 行動の多寡=環境との相互作用が最重要

 

認知療法ABC分析

 Activating event  →Belief → Consequence

 A:ある思考パターン →情報処理 → 行動

 情報処理が狂う 例:不安 → 不安からその行動を避けるようになる(回避行動が

           出やすくなる)

  認知の歪み=情報処理の問題が最重要

 

随伴性モデルと代替行動強化

 例 うつ病のモデル

 A:いい天気の日  B:家にいる 

 C:知人から無視されることで傷つくのを避けることができる→もっと一人ぼっちに

   なる。

   ※本当は外出して人と接したいが、行動が本心とは逆の方(悪い方)をしてい

    る。

  治療:代替行動を起こさせるようにする

 B:家にいる→外に出かける(代替行動) 代替行動を起こせば・・・

 C:散歩や知人との会話を楽しむことができる。 

  →うれしい体験 →B:家にいるという行動が減っていく →この繰り返し

 

情報処理モデルと認知再構成

 うつ病の例

 A:友達とすれ違ったが、こちらを見なかった

 →B:私には価値がないんだ。だから見向きもしなかったんだ。

 →C:落ち込む 

ここで、Bを変えるように促す

 

 B:多分単に気付かなかったんだろう。それだけのことだ。

 →C:気分が和らぐ

 この、B:の間違った考え方を修正し、その後のC:を変えていく。

 

 ただし、B:は上書きではなく、別名保存。B:の感じ方、考え方の枠組みを増やしてい

 き、ネガティブなものをポジティブな思考に変えるのではなく、思考の引き出しを増

 やすことになる。これにより、ネガティブな考え方もあるが、ポジティブな考え方も

 ある、というように複数の考え方を身に着けて(思考の幅を広げて)

 C:を再構成する。

 

認知行動療法の多様性の歴史的経緯

 1.行動療法が最初に登場

 2.行動療法だけではいろいろな問題を扱えない。人間は思考があるので、行動だけ

   ではアプローチできないとの流れが出てきた。

 3.行動療法と認知療法が合流して、お互いに取り込むようになってきた。

 

 第一世代(行動療法)(学習理論)

 ・レスポンデント条件付け

 刺激強化子随伴性 (パブロフの犬

 条件刺激が無条件刺激の機能を獲得する

   S ⇒ R

 「エクスポージャ法による情動反応の消去」が代表的技法 

 

 ・オペラント条件付け

 反応強化子随伴性+刺激性制御

 行動の結果が、反応を増・減する機能を持つ

 弁別刺激が強化・弱化の可能性を示す機能を、確立操作が動機付けを変える機能を持

 つ

 三項分析(ABC分析:Antecedent Behavior Consequence)

   S⇒R⇒C

 「随伴性の捜査による随意行動の増加と現象」が代表的技法

 

 挑戦した結果(行動の結果)、思っていたよりも不安にならない

 →次に同じ行動をしても不安が小さい

 →これを繰り返していくと反応が修正されていく

 

 レスポンデント条件付けとオペラント条件付けは言葉に関係ない。

 (動物でもできる)

 よって、行動を変えるのに強力な方法である。

 行動後60秒以内に伴った結果(気分が良い、悪い)が、その直前の行動に影響する。

 

行動療法では何が足りなかったのか

・扱える対象の狭さ

 「認知」の問題がかかわっている疾患や問題に適用できず、「セルフコントロール

 も十分には扱えなかった(実際の臨床の場では死活問題)

・実際の臨床行動とのギャップ

 例えば、神経性食欲不振症の体重増加を目的とする入院治療は、オペラント条件付け

 なのか?(入院後、安静にしていることは患者にとって嫌なこと→0.5kg体重増加につ

 き、自由に行動できることを増やす→体重を増やさないと嫌な状況から抜け出せない

 →1週間に1回で次のステップに進めるので、レスポンデント条件付けになっていない

 →理論的におかしい?)

認知行動療法の時代へ

 情動や潜在的行動にはレスポンデント技法とオペラント技法が、認知の問題には認知

 再構成法や問題解決技法が用いられるようになった。

 

第二世代(認知行動療法

・認知的変数の設定(→情報処理モデル)

 気分障害や不安障害などに対する臨床的要請から発達

 人間は動物と違い、予期、期待、信念などによって行動を自発する。

 媒介変数から独立変数へ、位置づけの転換

→人間は周りの影響を受けて行動している(媒介変数的)

 しかし、人間は自分で考えて行動を始めることができる。

 環境に左右されず独立した行動ができる。それをとらえる必要がある。

 つまり、認知の内容や頻度を変えることが目的に

 ABC分析

   S⇒O(認知)⇒R

 「認知再構成法」が代表的技法

 現実的には、多くの行動的技法を使用(=認知行動療法

 

網羅的なケースの概念化

 認知療法のABC,高度療法のABCのどちらも行い、網羅的にアセスメントし原因を探っ

 ていく必要がある。

 

 

認知行動療法では何が提供されなかったのか

・統一的な基礎理論の欠如

 「情報処理理論」には、基礎科学(認知心理学認知科学)による十分な裏付けがな

 く、統一的な基礎理論を構築する前提が成り立たない。

 ※認知心理学認知科学と全く関係がない!考え方の幅を広げていくと症状がよくな

  る。これは臨床から来た経験則で基礎的な科学の裏付けが無い。

エビデンスに基づく心理療法

 医学モデルによる診断に基づいてマニュアルを作成し、それによって効果研究をす

 る。

・モザイク的ケースフォーミュレーション

 いくら網羅的にアセスメントしても、どの時点で、どのようなアセスメントをするか

 の基準がない。

 ※目の前のクライアントに対して、行動療法と認知療法のどちらを使うか、の判断が

  難しい。

 

これまでの認知行動療法の限界

・全体をカバーできるような基礎理論が無い

 例えば、あるクライエントを前にしたときに、一番の問題が認知の問題なのか行動の

 問題なのかを判断する基準がないということ。

・この方法では、われわれの心理行動面が非連続的に変化する局面への適用は難しい

 例えば、人生の節目で選択を迫られるような問題に対しては、認知行動療法で用いら

 れる特定の環境下での因果論的なアセスメントでは不十分。

 

新世代の認知行動療法

・「世代」という言葉は、「古いものは捨て、新しいものを学べばよい」という含意を

 持ちがちだが、そういうことは全く意図されていない。

・第3の波と呼ばれることもあるように、第一、第2の波に重なって拡がっていくイメー

 ジ。

 

認知行動療法の3つの波

 →近年は認知の機能へ注目・マインドフルネス&アクセプタンスの重視

 

認知行動療法の新しい展開

・認知の内容よりも機能やプロセスが重視されるようになった。

 →行動を個体と環境との相互作用(影響の与えあい=機能)で規定する学習理論が

  「認知」も行動と見なして、本格的に取り扱うようになった。

 ※認知と行動は同じように扱うことができるとして、理論を組み立てるようになって

  きた。

 →情報処理理論では注意制御やメタ認知の基礎研究に基づいて、通常の認知の内容よ

  りもプロセスに注目するようになった。

  (メタ認知:認知に対する認知  心配性の人が心配を繰り返すのは、心配するこ

   とが自分にとって有益(考えておかないと大変なことになる)と思ってメタ認知

   的にコントロールしているから、やめられない。内容よりもこのプロセスに注目

   する。)

 

まとめ

認知行動療法は、行動や認知という測定可能な変数に注目しているため、客観的なア

 セスメントに基づき生活上の様々な問題の解決が可能になる、アカウンタビリティ

 高まる、介入法自体をデータに基づいて改良できる、という強みを持っている。

・一方で、学習理論に戻筑行動療法と、情報処理理論に基づく認知療法のそれぞれに由

 来する多様な体系を含んでいるため、それに由来する問題も内包しており、その解決

 のひとつの方向性として新世代(第3世代)の認知行動療法が発達してきた。

 

以上

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